NPO法人ヴェーダビージャム

ギーの作り方──バターとの違いと、古典に伝わる使い方

ギー(ghee/サンスクリット語で ghṛta・घृत)とは、バターから水分と乳固形分を除いてつくる、インドで古くから使われてきた油です。常温で保存でき、アーユルヴェーダの古典では油脂のなかで最も上に置かれてきました。

このページでは、ギーの作り方を写真つきでご案内します。そのあとで、バターとの違い、インドで作られているギーとの違い、白湯や料理での使い方、古典での扱いまでまとめました。

ギーの作り方(手順)

使うもの

ギーづくりに使うもの——無塩バター、ザル、不織布、ガラスの保存容器

使うものはこれだけです

  • 無塩バター 450g
  • ザル
  • 不織布(ザルに敷きます)
  • 保存容器(ガラスや琺瑯など、清潔なもの)
  • 厚めの鍋

*不織布はキッチンペーパーよりも素早く濾すことができるのでおすすめです。

手順

厚めの鍋で無塩バターを弱火で溶かす

1. 無塩バターを鍋に入れ、火にかけます

ギーの作り方はまずここから。着火したら、そこからずっと弱火です。コンロのなかでいちばん小さな火にしてください。強めると焦げます。

バターの水分が飛ぶ段階。大きめの泡が立ちパチパチと音がする

バターに含まれる水分が飛んでいく音です

2. パチパチと音がしてきます

この間、家中にギーの香りが広がります。

音が小さくなり、鍋底の乳固形分が茶色く色づいてくる

鍋底に沈んだ乳固形分が色づいてきます

3. だんだん音が小さくなり、底が茶色くなります

音が静まってくるのが、終盤に入った合図です。

表面が細かい泡で覆われたカニ泡の状態

表面が細かい泡でびっしり覆われます

鍋全体がカニ泡に覆われた完成の状態

4. 最後は「カニ泡」になります

不織布を敷いたザルで、ガラス容器にギーを濾す

ほどよく温かいうちに濾すのが楽です

5. 不織布を敷いたザルで濾します

火を止めてから少し置いてもかまいませんが、冷めすぎると冬場は固まります。ほどよく温かいうちに濾してください。

濾し終えた黄金色のギー

濾し終えたギー

6. できあがり

加熱時間の目安は、あえて書きません

鍋の厚さとコンロの火加減で変わるからです。

分数を書くと、それに釣られて焦がしてしまう方が出ます。ギーの作り方でいちばん失敗するのがここです。

ワークショップでお伝えしているのは、この方法です。

厚めの鍋を使い、コンロのなかでいちばん小さな弱火で、一度作ってみる。そして自分の鍋とキッチンで何分かかったかを覚えておく。

一度自分の数字を持てば、二度目からは迷いません。見るのは時計ではなく、音と、鍋底の色と、泡です。上の手順2〜4がそのまま目安になります。

保存

油なので常温で保存できます。 ガラスや琺瑯など、清潔な容器に入れてください。

気をつけるのは水気を入れないことだけです。濡れたスプーンを差し込まない、水滴のついた容器を使わない。ここだけ守れば、扱いの難しいものではありません。

「何か月もつ」という言い方はしません。 保管の状態で変わるからです。冷蔵庫に入れる必要はありませんが、清潔さのほうを気にしてください。

ギーの作り方(動画)

ギーとバターはどう違うのか

「ギーバター」という言い方をよく見かけますが、ギーはバターの一種ではありません。 バターから取り除いたものがある、という関係です。

バター ギー
水分 含む 除いている
乳固形分(たんぱく質・乳糖) 含む 除いている
保存 冷蔵 常温
焦げやすさ 焦げやすい 焦げにくい

取り除いているのは水分と乳固形分の2つです。水分がないので常温に置けます。焦げの原因になる乳固形分がないので、炒めものにも使いやすくなります。

「澄ましバター」もほぼ同じ発想の油ですが、ギーは乳固形分を色づくまで加熱してから濾すため、香りが違います。

インドで作られているギーは、少し違います

インドで古くから作られてきたギーは、搾りたての牛乳を出発点にします。 牛乳をヨーグルト(ダヒ)にし、水を加えて撹拌してバターを取り出し、それを加熱してギーにする——という工程です。

ギーのなかでは、牛のギーが有益とされています。

——チャラカサンヒター総論編 25:38(Caraka Saṃhitā, Sūtrasthāna 25:38)

つまり、無塩バターから作るギーと、インドの伝統的なギーは、出発点が違います。

そして日本で暮らす一般人の私たちにできるのは、無塩バターを買ってきて、そこから水分とたんぱく質を除去する方法だけです。 牧場を持たない限り、搾りたての牛乳は手に入りません。

それでも、取り除く工程そのものは同じです。ギーの作り方はできることをやって近づける、という話だと考えています。

ギーの使い方

作り方を紹介しているページは多いのですが、使い方まで書いてあるものは意外と少ないので、あわせてまとめます。

  • 白湯にひとさじ——白湯の作り方 と組み合わせて
  • 温かい料理に落とす——炊きたてのご飯、スープ、蒸し野菜に
  • 炒めものの油として——焦げにくいので扱いやすい
  • 果物をソテーする——りんごや梨、柿を切ってさっと
  • スパイスを熱する——インド料理の最初の一手間
  • お菓子に——ラドゥなどインドの菓子はギーで作ります
  • セルフケアに——スキンケア、足裏に塗るなど

蜂蜜と同じ量を、同時にとらないこと

古典に、はっきりした注意書きがあります。

蜂蜜とギーを同時に等量食べることは「量的な矛盾」であるとして、健康を害する食べ合わせに挙げられています。

——チャラカサンヒター総論編 26:88 以降

どちらも古典で高く評価されているものなのに、同じ量を一緒に、というのは避けるように書かれています。 量が違えば問題にはなりません。知らずに合わせてしまいやすい組み合わせなので、覚えておくと安心です。

古典でのギーの位置づけ

アーユルヴェーダの古典は、油脂をひとまとめに扱いません。4種類、ギー(サルピ)、骨髄(マッジャー)、肉脂肪(ヴァサー)、油(タイラム)を名前で挙げて順位をつけ、そのいちばん上にギーを置いています。

「体に良い油」という漠然とした話ではありません。

そして古典は、ギーをいちばん上に置く理由を3つ挙げています。

  • 他のものと一緒に煮出すと、その性質を自分に取り込む——古典には、薬草をギーで煮出してつくるものが数多く登場します
  • 甘みがあるので、消化されるときに刺激にならない
  • 生まれたばかりの時期から使われてきた

 

——アシュターンガフリダヤサンヒター総論編 16:2(Aṣṭāṅga Hṛdaya Saṃhitā, Sūtrasthāna 16:2)

古典の言葉では:「油剤の中でギー(サルピ)、骨髄(マッジャー)、肉脂肪(ヴァサー)、油(タイラム)が順に優れている。これら4種の油類の中で、ギーは最も優れている。なぜなら他の薬物との製剤により、その薬物の性質を獲得し、甘みゆえに消化される時に刺激性がなく、また出生児よりこれを使用しているからである」

もうひとつ、体質との関係でも挙げられています。アーユルヴェーダでは、体と心の傾きをドーシャという3つの質で考えます。ギーはそのうちヴァータとピッタという2つの質に対して、鎮める側の食べものとして語られてきました。

最も優れたものを列挙した項目のなかで、ヴァータとピッタを緩和するものとしてギーが挙げられています。

——チャラカサンヒター総論編 25:40

ドーシャの考え方は アーユルヴェーダとは のページで、ヴァータについては ヴァータとは でご紹介しています。

ヴェーダビージャムのお知らせを受け取る

登録いただいた方には特典として3ドーシャの見取り図とパンチャカルマの資料をお届けいたします。加えて、新しいワークショップや講座開催のご案内、活動のお知らせを、メールで不定期にお届けします。登録はメールアドレスのみ、解除もいつでもできます。